法人閉鎖手続きの画像

シンガポールに法人を設立したけれど、諸事情によりシンガポールから撤退しなければならなくなった。
そんな方のために、このページでは、会社の解散をスムーズにすすめられるよう、会社解散の手続方法から、その費用までをわかりやすく説明させていただきます。

また、これからシンガポール進出を検討してる方も、予め清算する際の手順やコストを把握しておくことは大切なので、このページを読んでくださいね。

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シンガポールで法人を閉鎖する

日本では、法人を立ち上げるのは、以前と比べると比較的簡単・安価になったようですが、
廃業、廃止にするのは手続きが煩雑な上に、かなり費用もかかるようです。

そんな日本と比べるとシンガポールは、比較的簡素な方法で法人を閉鎖することが可能です。
ただし、設立の際と比べると、閉鎖の場合手続きはやや煩雑です。

それでは順を追って、説明させていただきます。

法人閉鎖手続き3つの種類

シンガポールで設立した会社を閉鎖する手続きは、主に下記の3つの方法に分類されます。

1.裁判所の決定に基づき、会社を清算する方法 (Winding Up by Court)
2.株主または債権者によって、自発的に会社を解散する方法-任意清算 (Voluntary Winding Up)
3.簡易的な手続で会社を閉鎖する方法-登記抹消 (Striking Off)

上記のうち、裁判所命令による方法と債権者による任意清算は株主自らの意志で会社を閉鎖するものではありません。

こちらのページでは、株主による任意の清算手続 (Members’ Voluntary Winding Up)と
登記抹消(Striking Off)について説明していきます。

会社を閉鎖するということ

それぞれの手続の詳細をご説明する前に、
会社を閉鎖するという事について簡単に説明します。

会社を清算するためには、今まで行っていた事業を停止しなければなりません。
ただし、会社の事業を停止しただけでは廃業したことにはなりません。

事業を停止した状態は、「休眠」や「休業」と呼ばれます。
この場合、法人格は未だ存続したままです。
「休眠」や「休業」状態であっても、年度末の報告は必要になります。

会社の事業を廃業とし、会社を閉鎖するには、
法律に定められた手続きにより、会社を「解散」し、「清算」する必要があります。

株主による、自発的な清算手続きについて

1.清算手続きに必要な条件

株主による自発的な清算手続きを進めていくためには、
清算予定の法人に債務超過がなく、かつ支払能力を有している事が必須条件となります。
債務超過に陥っている場合は、法人を清算する前に債務超過を解消する必要があります。
解消できない場合は、法人を自発的に精算することができません。

2.清算手続きを進めるための準備

清算を進めるためは、予め下記の整理を進めておく必要があります。
・従業員の整理
シンガポールは日本と異なり、従業員の解雇は比較的簡単に行えます。
また、退職金等の慣例もありません。
清算が決まったら速やかに従業員の整理を行うことをオススメします。

・債権・債務の整理
清算の宣言後12ヶ月以内にすべての債務を整理することが、会社清算の条件になっています。
債務を完済できない場合には会社を閉鎖することができないこともあるため、
債権や債務の整理は清算が決まったら速やかに行いましょう。

・資金の整理
清算までに資金はできるだけ整理しておきましょう。
複数の銀行口座を保有している場合は、
一つにまとめてしまったほうが、その後の手続が簡単になります。

・契約の整理
オフィスの什器や社用車等のリース契約を結んでいる場合は、
早めに契約を打ち切りましょう。
また、法人で住居を借り上げている場合は、契約についてもきちんと整理しておきます。


1.の条件を満たしている場合、臨時の株主総会を開催し、
法人の解散を宣言、清算人の指名を行います。

株主総会の宣言をもとに、
会社法や会計基準の監督官庁であるACRA(Accounting and Corporate Regulatory Authority)に法人閉鎖の届け出を行います。
また、シンガポールの新聞へ法人清算の公告を行うことも必要です。

任意の清算とはいえ、清算の宣言から実際に法人が清算されるまでには、
1年ほどの期間を有し、さらに様々な手続きが必要となります。

このため、ごく小規模で事業を営んでいる場合は、
次にご説明するストライク・オフの方法で法人を清算するのが一般的です。

登記抹消:ストライク・オフの手続きについて

ストライク・オフの申請ができれば、通常の清算手続きよりも早く、
複雑な手続きを踏まずに清算が可能になります。

ただし、ストライク・オフを行うには、
下記の条件を満たしている必要があります。

1.ストライク・オフによる清算手続きに必要な条件

1.設立以後事業活動を行っていない、
あるいは事業を停止して休眠状態であること。

2. 政府等への未払債務や未払いの税金がないこと。

3. 会社の請求書に未払いの請求がないこと。

4. シンガポール国内外に係争中の訴訟案件がないこと。

5. 資産または負債がないこと。

6. 清算に対して過半数の株主の同意を得ていること。

下記は、ACRAに記載されているストライク・オフに関する原文です。
Criteria to strike off a company

  • The company has not commenced business since incorporation or has ceased trading.
  • The company has no outstanding debts owed to Inland Revenue Authority of Singapore (IRAS), Central Provident Fund (CPF) Board and any other government agency.
  • There are no outstanding charges in the charge register.
  • The company is not involved in any legal proceedings (within or outside Singapore).
  • The company is not subject to any ongoing or pending regulatory action or disciplinary proceeding.
  • The company has no existing assets and liabilities as at the date of application and no contingent asset and liabilities that may arise in the future.
  • All/majority of the director(s) authorise you, as the applicant, to submit the online application for striking off on behalf of the company.

2.ストライク・オフによる会社閉鎖の準備

ストライク・オフによる会社清算の手続きを進めるために、
速やかに順番に従って、下記の準備を行いましょう。

1.債権債務の整理を行い、債権債務をゼロとする
2.固定資産や資産の処分を行う。
3.すべての税金の支払いを行う。
4.銀行口座残高をゼロにする。
5.銀行口座を閉鎖する。
6.資産負債がゼロとなった最終財務諸表の作成を行う。

個人で小規模に法人を運営している場合は、1.や2.は該当しない場合が多いと思います。
ストライク・オフの前に銀行口座を閉鎖する事は必須条件ですが、
口座閉鎖の前に、法人税等の税金の未納がないか、きちんと確認しておきましょう。

3.ストライク・オフによる会社閉鎖手続きの手順

6.までの準備完了が完了したら、ストライク・オフの手続きに入ります。
ストライク・オフによる会社閉鎖手続の流れは以下の通りとなります。

  1. 取締役会にてストライク・オフの決議を行う。
  2. 株主による会社閉鎖合意書の作成 (合意書に作成には過半数以上の株主の合意が必要)
  3. ストライク・オフ申請書の作成 (取締役全員のサインが必要)
  4. ACRAへストライク・オフの申請を行う。
  5. 申請受領後、法人の登記住所及び取締役全員の住所に、ACRAからストライク・オフの通知が送付される。
  6. 申請受領後30日が経過しても異議申し立てがない場合、ACRAは政府官報に会社名を公表。
    これを「First Gazette Notification」といいます。
  7. 「First Gazette Notification」の後60日の間に異議申し立てがない場合、ACRAは再度、政府官報に社名が登記抹消される事と登記抹消予定日を公表。
    これを「Final Gazette Notification」といいます。
  8. 7.の「Final Gazette Notification」の後、会社の登記は抹消されます。

上記のプロセスは、ACRAへの申請後最低でも4ヶ月を要します。
最終的な登記の抹消までは、オフィスの住所は必要です。
また、最低1名の取締役の存在も必要になります。

下記は、ACRAのページからの原文引用です。

  1. Once the application is approved, ACRA may send a striking off notice to the company’s registered office address, its officers (such as director, company secretary and shareholder) at their address in our records..
  2. After 30 days from the approval of the striking off application, if there is no objection, ACRA will publish the name of the company in the Government Gazette. This is known as the First Gazette Notification.
  3. After 60 days from the First Gazette Notification, if there is no objection, ACRA will publish the name of the company in the Government Gazette again and the name of the company will be struck off the register. The date that the company is struck off will be stated. This is known as the Final Gazette Notification.

The entire process will take at least 4 months.

4.異議申し立てがあった場合

上記プロセスの7.までに、もし異議申し立てがあった場合、ACRAからその旨が通知され、その解決に2ヶ月間が与えられます。
もし、2ヶ月以内に問題を解決できない場合には、ストライク・オフの申請は失効となり、問題を解決後、改めてストライク・オフを申請しなければいけません。

そのような事態を避けるためにも、偶発債務等が発生しないよう、事前の確認が必要です。

5.ストライク・オフを実施する上で気をつける事

いくら、ストライク・オフが簡易的な会社の精算方法とはいえ、勝手に手順を変えてしまったりして不備が発覚した場合、
最悪の場合再申請と言う事も起こり得ます。
そんな事にならないように、決められた手順をきちんと守って実施しましょう。

現地取締役、秘書役、そして登記住所は登記抹消まで必要になります。
この点も注意しましょう。

休眠会社という選択

現在はほとんど法人が機能していないが、将来的にはもう一度きちんとビジネスを行う予定がある。
そんな場合は、すぐに法人を清算することはせずに、休眠手続きを取ると言う方法も選択肢として挙げられるでしょう。

特に以前と比べ、法人の銀行口座が厳しくなって来ているので、もし、もう一度事業を行う可能性がある場合などは、
法人を閉鎖することを躊躇してしまうかもしれません。

ただし、会社を休眠したからと言って、経費がかからないわけではありません。

休眠となった会社は、会計監査や会計処理等の必要はありませんが、
年度末の株主総会や政府への会計報告は一般の法人と同様に必要です。

また、会社を維持していく為には、たとえ休眠会社でも、
暫定の取締役や、登記住所、そして秘書役等が必要なため、
毎月の経費は発生してきます。

法人を清算してしまうのか、それとも休眠会社として存続させるのか。
会社設立の際には出口についても、しっかり検討する事をオススメ致します。

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