シンガポールへの移住や会社設立を検討する際、まずは、ネットから情報を収集するのが一般的ではないでしょうか。
しかし、それらの中には正確ではない情報や、既に古くなってしまった情報。
あるいは、一部の事例を誇張した内容が含まれている場合もあります。
そうした情報をそのまま信じ、その情報を元にした、問い合わせをされる方を多く見受けます。
正しい情報を知らないまま準備を進めてしまうと、計画の見直しが必要になったり、手続きが想定以上に複雑化したりすることも少なくありません。
この記事では、シンガポールでの会社設立や移住に関する、よくある勘違いを徹底解説し、正確な情報をお届けします。
計画を進める上での基礎知識として、ぜひお役立てください。
皆さまがスムーズに準備を進め、理想のシンガポール生活を実現するためのお手伝いができれば幸いです。
1.会社設立に関するよくある誤解
まず始めに、シンガポールでの会社設立に関する質問の中で
よくある誤解をご紹介します。
シンガポールに会社を設立したら、節税が可能になる
当社に一番多くいただく勘違いが、こちらのお問い合わせです。
シンガポールの法人税は17%、日本は基本23.2%。
この税率からすると、シンガポールで会社設立をすることで節税が可能になるという考えは、
一見正しいように思えますが、実は必ずしもそうではありません。
法人税率の低いシンガポールに会社を設立することで税負担が軽減されるのは事実です。
しかし、それだけでは節税効果を十分に得ることはできません。
その理由は、シンガポールの税制が「居住者課税原則」に基づいているためです。
会社が実際にシンガポールで活動し、現地で事業運営をしていることが必要になります。
単にペーパーカンパニーを設立しただけでは、
期待している節税効果を得られないどころか、場合によっては税務リスクが高まることもあります。
なぜなら、シンガポールでは、会社が実際にその国で活動し、
事業を行っていることが求められているからです。
つまり、ペーパーカンパニーのように、形だけ会社を作っても意味がないのです。
節税を成功させるには、会社設立後の実際の事業運営や、税務上のコンプライアンスをきちんと満たすことが重要です。
この点を理解せずに、設立だけで節税が可能と考えるのは危険です。
節税を成功させるためには、
-
- シンガポールで実際に事業を行う
- 税金のルールをしっかり守る
これらの両方が大切です。
最低資本金1ドルで会社は設立できる
「シンガポールでは1ドルで会社を作れる」と聞いたことがある方もいるかもしれません。
確かに、法律上は最低資本金が1ドルと定められており、この金額で会社を設立することは可能です。
しかし、これはあくまで設立要件の最低条件であり、
実際にビジネスを運営する際には十分な資本金が必要になります。
特に、外国人資本の法人の場合、1ドルの資本金ではいくつかの問題に直面します。
例えば、シンガポールでの銀行口座開設。銀行は信用力を重視するため、
資本金が極端に少ない場合、口座開設が拒否されることがあります。
銀行口座がなければ、法人としての基本的な金融取引すらできません。
さらに、設立した法人から就労許可(エンプロイメントパス)を申請する場合は、
適切な資本金が必要となります。
1ドルの資本金では事業の実態が疑われ、申請はほぼ通らないのが現実です。
最低資本金という法律上のハードルは低いですが、外国人が、シンガポールで会社を設立する場合は、
現実的な資本金を用意することが必要です。
現地人が会社を設立する場合と、外国人が会社を設立する場合の違いを理解することが重要です。
会計業務は税理士や会計事務所に依頼し、毎月顧問料を支払う必要がある。
シンガポールでは、法律で会計企業規制庁(ACRA)への年次報告が義務付けられています。
この作業にはある程度の専門知識が必要であるため、会計事務所等に依頼するのが一般的です。
ただし、日本と異なり、毎月の会計業務を外部に委託する必要はありません。
特に小規模事業の場合、毎月の帳簿管理を外部に委託する必要性は低く、
1年に一度、年度末のタイミングで必要な書類をまとめて依頼すれば十分です。
日本で一般的な税理士の顧問料に相当するような毎月の固定費は発生しません。
この仕組みは、シンガポールの法人運営コストを抑えることができる点で大きなメリットがあります。
ただし、正確な帳簿を日々記録しておくことは重要です。
2.就労許可に関する一般的な誤解
次によくある、就労許可-通称EPに関する誤解についてご紹介します。
大学卒業以上の資格がないと、EPの取得はできない。
「大学卒業以上の資格がないと、EPの取得はできない」という誤解は以前から存在していましたが、
2024年のCompass制度導入後、特に顕著になっています。
シンガポールの就労許可制度は、
2024年9月から導入されたCompass((Complementarity Assessment Framework)制度によって大きく変わりました。
Compass制度は、申請者の学歴、経験、給与などを総合的に評価するポイント制です。
Compass制度の下では、大卒未満の学歴保持者はCompass要件での申請が不可能となりました。
しかし、月額給与をS$22,500以上に設定することで、申請はCompass制度の対象外となり、
学歴要件に関係なくEP取得が可能です。
Compass制度で定められている他の要件(外国人従業員比率や、シンガポール人の採用実績など)も一切関係なくなるのです。
給与基準を満たすことができれば、この方法は大卒未満の方にとって確実性の高い選択肢となります。
ただし、給与を高く設定することで必然的に個人所得税も上昇するため、税務面での影響は慎重に検討する必要があります。
結論として、学歴要件は絶対的な障壁ではなく、給与額を引き上げると言うアプローチで解決できるのです。
EPを取得したら、一年のある一定期間は、シンガポールに留まらなければならない?
「EPを取得したら、一年のある一定期間は、シンガポールに留まらなければならない」という誤解は、
他国の制度との混同から生じていることが多いようです。
例えばオーストラリアでは、就労許可保持者に対して年間の最低滞在日数が定められていますが、
シンガポールのEPにはそのような滞在要件は存在しません。
また、日本でよく知られている「183日ルール」(税務上の居住者判定基準)との混同も見られますが、
これもEP保持者には当てはまりません。
シンガポールでは、EPを取得した時点で納税義務が発生し、シンガポールの税務居住者として扱われます。
つまり、実際の滞在日数に関係なく、EP有効期間中の給与所得に対してシンガポールでの納税義務が生じるのです。
ただし、出入国に関する制限がないからといって、長期の不在が推奨されるわけではありません。
雇用主との契約内容や、ビジネス上の責任を適切に果たすことは当然必要です。
正しい情報を取得しましょう
シンガポールでの法人設立・就労許可取得は、節税やビジネスチャンスを広げる魅力的な選択肢です。
しかし、正確な情報に基づかずに進めると、思わぬ壁に直面することがあります。
これまで解説したような誤解は、多くの方が抱きがちなものです。
これらの誤解の多くは、インターネットや二次情報で得た断片的な情報を鵜呑みにしてしまうことが原因です。
シンガポールの税制やビジネス環境について、
正確で全体的な理解を持たないまま進めることで、不必要な手間やリスクが生じる可能性が高まります。
正しい知識に基づいて準備を進めることが、成功への第一歩です。
インターネットでの情報収集は手軽ですが、
信頼できる専門家のアドバイスを受けることで、安心して法人設立を進めることができます。
これらのポイントを押さえることで、
シンガポール法人設立にまつわる誤解を解消し、スムーズにプロセスを進められるでしょう。
正確な情報を元に、事業を次のステージへと進めてください。
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