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シンガポールで法人を設立し、ご自身やご家族の移住を目前に控えたオーナーの皆様。

ビジネスの準備に加え、最も気がかりなことの一つが、「現地で病気やケガをしたらどうしよう」というご家族の健康保障ではないでしょうか。

シンガポールの医療水準は世界トップクラスであり、日本人医師が在籍するクリニックも多く、治療そのものの質は心配ありません。

しかし、日本の国民健康保険のような公的制度はなく、医療費は原則として全額自己負担です。

また、医療機関での支払いは都度の現金またはクレジットカードでの精算が原則です。

このため、特に小さなお子様がいらっしゃるご家庭では、体調の度に診療費の支払いや請求書管理を行うことが、想定以上に煩雑になるケースが少なくありません。

さらに、英語での問い合わせや保険請求手続きが加われば、体調が悪い時の負担はより大きなものになります。

「現地でも、日本と同様に、言葉や手続きのストレスなく、質の高い医療をスムーズに受けたい」

このようなご要望を叶えるための鍵が、適切な民間医療保険、特に「キャッシュレス特約」付きのプランです。

本記事では、「シンガポールで法人を設立したオーナー」が、「帯同するご家族」のために、利便性と安心を最大化する医療保険をどのように選べばよいのか、その基礎知識から具体的な選択肢までを解説します。

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実は日本の医療制度、世界では珍しいってご存知でしたか?

日本で生活していると、「保険証を持って病院に行けば、どこでも診てもらえる」というのが当たり前ですよね。

  • 風邪を引いたら近所のクリニックへ、専門的な治療が必要なら大きな病院へ。
  • 支払いは医療費の3割だけで、残りは保険がカバーしてくれる。
  • 高額な治療費がかかっても、高額療養費制度があるから安心。

この「当たり前」、実は世界的に見るととても恵まれた、珍しい制度なのです。

日本の医療制度は、1961年に国民皆保険制度が確立して以来、WHO(世界保健機関)から高い評価を受けてきました。
2000年には総合評価で世界トップクラスと認められたほどです。

この制度の特徴は、次の3つにまとめられます。

1.国民全員が公的医療保険に加入

会社員は社会保険、自営業者やフリーランスは国民健康保険。日本に住む人は、必ず何らかの公的医療保険に加入しています。

2.どこの病院でも自由に受診できる

かかりつけ医の紹介状がなくても、自分で選んだ病院を受診できます。

今日は近所のクリニック、明日は大学病院、ということも可能です。

3.全国どこでも同じ治療なら同じ料金

診療報酬点数制度により、東京でも大阪でも、同じ検査や治療であれば料金は統一されています。

では、海外ではどうでしょうか?

実は、このような制度を持つ国は世界でもごく一部です。

多くの国では、民間保険に加入するか全額自己負担で医療を受けるのが一般的で、公的保険があっても受診できる病院が限定されていたり、診察まで長期間待たされたりすることも珍しくありません。

もちろん、シンガポールも例外ではありません。

「保険証1枚で、いつでも、どこでも、誰でも、質の高い医療を受けられる」という日本のシステムは、世界的に見ればむしろ例外的なのです。

シンガポールに移住すると、この「日本の常識」が通用しないことに、多くの方が驚かれます。

特に、小さなお子様を連れて移住されるご家族にとっては、医療システムの違いを事前に理解しておくことが、安心した生活のスタートにつながります。

次の章では、シンガポールの医療事情について、具体的に見ていきましょう。

シンガポールの医療レベルは世界トップクラス! でも知っておきたい「日本との3つの違い」

まず最初にお伝えしたいのは、シンガポールの医療水準は非常に高いということです。

WHOのランキングでもアジアトップクラスと評価されており、医療技術や設備は日本と同等、あるいはそれ以上のレベルにあります。

また、シンガポールには日本人医師が常駐する日系クリニックが複数あり、日本語で診療を受けることができます。

言葉の壁を心配する必要はありませんし、母子手帳にも対応してもらえるため、お子様の予防接種や成長記録も日本と同じように管理できます。

医療の「質」については、まったく心配する必要はありません。

特に私立の病院では、一人の患者にたっぷりと時間を取ってくれるので、日本以上に満足のいく診察を受けられると感じることも多いです。

では、何が日本と違うのでしょうか?
それは、医療を受けるための「制度」や「システム」です。

違い1:医療費は100%自己負担が原則

日本では、医療費の自己負担は原則3割(年齢や所得により異なる場合あり)です。
残りの7割は、国民健康保険や社会保険がカバーしてくれます。

一方、シンガポールには、日本のような公的医療保険制度がありません。

シンガポール国民と永住者は、CPF(中央積立基金)という強制貯蓄制度の一部を医療費に充てることができますが、外国人居住者である私たちは、この制度を利用することができません。

つまり、病院で診察や治療を受ける場合、その費用は100%自己負担となります。

違い2:自由診療制で、病院によって料金が大きく異なる

日本では、診療報酬点数制度により、全国どこの病院でも同じ治療なら同じ料金です。
しかし、シンガポールでは、病院側が独自に料金を設定する自由診療が採用されています。

そのため、同じ風邪の診察でも、公立系の病院と私立病院、あるいは担当する医師によって、治療費が大幅に異なることがあります。

一般的に、日本語対応の日系クリニックや私立病院は、料金が高めに設定されています。
一回の診察で数万円の費用がかかることは、決して珍しくはありません。

違い3:現金・カード払いが基本。都度の精算が必要

日本では、保険証を提示すれば、窓口での支払いは自己負担分(3割)だけで済みます。
また、高額療養費制度により、月々の医療費負担には上限が設けられています。

しかし、シンガポールでは、診察のたびに全額を現金またはクレジットカードで支払う必要があります。

保険利用に関しても、後日、加入している民間保険会社に請求書を提出して、保険金を受け取るという流れが一般的です。
(ただし、キャッシュレス診療が可能な保険もあります。詳しくは次の章で。)

実際にかかる医療費の目安

具体的に、どれくらいの費用がかかるのでしょうか?

以下は、日系クリニックや私立病院での一般的な料金の目安です。
(2025年12月のレート:1SGD = 約120円で換算)

一般的な診療:
  • 風邪での通院・処方薬込み:S$150〜300(約18,000円〜36,000円)
  • お子様の発熱での診療・検査・薬:S$200〜400(約24,000円〜48,000円)
  • 専門医の診察:S$200〜500(約24,000円〜60,000円)
入院が必要な場合:
  • 入院費(1日あたり):S$500〜2,000(約60,000円〜240,000円)
  • 手術を伴う場合:数千〜数万SGD(数十万円〜数百万円)

日本では「ちょっと風邪気味だから病院に行こう」と気軽に受診できますが、シンガポールでこの感覚でいると、毎回数万円の出費になってしまいます。

もちろん、比較的料金の安い公立病院を選択することも可能です。
シンガポール人の多くは、軽い症状の場合は公立のポリクリニック(地域診療所)を利用しています。

ただし、公立病院では基本的に英語での診療となりますし、待ち時間も長くなることが一般的です。

結果として、多くの日本人ご家族は、日本語対応の日系クリニックや私立病院を選ばれることになります。

小さなお子様がいらっしゃる場合は特に、環境の変化や気候の違いで体調を崩しやすく、移住後しばらくは頻繁に病院に通うことも珍しくありません。

毎回高額な医療費を都度支払い、さらに請求書を保管して保険会社に提出して…という作業は、想像以上に負担になります。

だからこそ、シンガポールで安心して生活するためには、ご自身とご家族に合った民間医療保険への加入を検討する必要があります。

次の章では、特にお子様連れのご家族におすすめしたい「キャッシュレス診療」について、詳しくご説明します。

海外生活だからこそ安心したい「キャッシュレス診療」という選択肢

前の章で、シンガポールでは医療費が100%自己負担で、毎回高額な支払いが必要になることをお伝えしました。

さらに、一般的な医療保険では、以下のような流れになります。

病院で診察を受ける
窓口で全額を現金またはクレジットカードで支払う
領収書と診断書を受け取る
帰宅後、保険会社に請求書類を提出する
数週間後、保険金が振り込まれる

つまり、一時的にせよ、高額な医療費を立て替える必要があるのです。

お子様が発熱して夜間診療を受け、S$300(約36,000円)を支払う。
翌週、また体調を崩して再診し、S$200(約24,000円)を支払う。
さらに、その請求書を整理して保管し、保険会社の指定フォームに記入して郵送する…

体調が悪いお子様の看病で疲れている時に、こうした手続きを英語で行うのは、想像以上に負担になります。

キャッシュレス診療という選択肢

こうした負担を軽減してくれるのが「キャッシュレス診療」です。

保険会社と提携している病院やクリニックで、保険証(または保険カード)を提示するだけで診察を受けられる仕組みです。

窓口での支払いは不要で、病院と保険会社が直接やり取りをしてくれるため、日本で保険証を使って診察を受けるのと、ほぼ同じ感覚で利用できます。

特に、小さなお子様がいらっしゃるご家庭では、移住後しばらくは環境の変化で体調を崩しやすく、頻繁に病院に通うことも珍しくありません。

そんな時、毎回の支払いや請求書管理の手間から解放されることは、生活の質を大きく左右します。

ただし、すべての保険プランにキャッシュレス診療が付いているわけではありません。

また、利用できる医療機関も保険会社によって異なります。

保険を選ぶ際は、以下の点を確認しておきましょう。

日本語対応の日系クリニックが提携ネットワークに含まれているか
通院・入院のどちらでキャッシュレス診療が利用できるか
緊急時の連絡先や事前承認の手続き方法

日本では考えなくても良かった「医療費の立て替えや請求手続き」が、海外生活では意外と大きな負担になります。

キャッシュレス診療に対応した保険を選ぶことで、ご家族の安心と、日々の生活の利便性を大きく高めることができます。

次の章では、渡航前に知っておきたい、医療保険選びの基礎知識について詳しくご説明します。

渡航前に知っておきたい、シンガポール医療保険選びの基礎知識

シンガポールでの医療保険選びは、日本の保険選びとは少し勝手が異なります。
渡航前に基本的な知識を押さえておくことで、移住後の生活がぐっとスムーズになります。
ここでは、特にシンガポールで法人設立される方が知っておくべきポイントをご説明します。

保険は法人契約、それとも個人契約がお得?

シンガポールで法人を経営する場合、ご家族やご自身の保険を、法人で契約するか個人で契約するか、どちらにしたほうが、税金を収める上で得になるでしょうか?

これは、会社の規模によって異なります。

シンガポールの法律では、従業員の保険は、経費として扱うことができます。
この場合、ご自身とご家族の保険は、会社契約にした方が得と考えるのが普通です。

但し、ここで注意が必要です。
シンガポールのほとんどの保険会社では、従業員が3名以下の場合(保険会社によっては5名以下の場合もあります)、法人としての契約を認めていません。

もちろん、個人で設立した会社で、従業員が2名以下の場合でも、ご自身やご家族の保険を会社契約にしたい場合、保険金支払人を法人にすることはできます。

但し、この場合、会社からの保険料補助とみなされ、給与の一部となります。

そうなると、固定の給与額に会社が支払った保険料が上乗せされ、個人の税負担が大きくなります。
また、会社側では保険料としての控除対象とはなりません。
なので、従業員が3名以下の場合は、会社契約ではなく、個人契約とするのがおすすめです。

通院のための保険は必要?

シンガポールのほとんどの医療保険は、軽い病気や怪我による通院に利用する場合、かなり高額の掛け金を支払うことになります。

一般的に、シンガポール人は、深刻な病気や大きなケガなどの事態に備えるための医療保険のみに加入し、軽い怪我や病気の場合は、保険には加入せず、それぞれの収入等に応じて病院を選んで利用しています。

但し、小さなお子様がいらっしゃるご家庭では、移住後しばらくは環境の変化で体調を崩しやすく、頻繁に病院に通うこともあります。
そんな時、毎回高い医療費を払うのは大変ですし、請求書の管理や保険会社への提出作業も負担になります。

通院保険(Outpatient Coverage)に加入すれば、日常的な診療費がカバーされ、キャッシュレス診療が利用できる場合もあります。
ただし、保険料は年間でS$2,000〜4,000(約24万円〜48万円)程度と高額です。

また、年間の利用限度額も設定されている(S$1,000〜3,000程度が一般的)ため、本当に保険に入る必要があるのかは、毎月の医療に関する支出などと保険料を比較する必要があります。

一方、入院や手術に備える保険(Hospitalization Coverage)は必須です。
万が一の大病や事故に備えるためのもので、年間補償限度額はS$100,000(約1,200万円)以上がおすすめです。

既往症がある場合は?

保険加入時には、既往症(過去に治療を受けた病気やケガ)について正確に申告する必要があります。

渡航前に準備しておくこと:

健康診断を受け、結果を保管してお
既往症がある場合は、英文の診断書を取得してお
現在服用中の薬がある場合は、英語名(成分名)を確認してお

既往症がある場合、その病気に関しては保険の補償対象外となることが一般的です。
ただし、保険会社やプランによっては、一定期間経過後に補償対象となる場合もあります。
加入前に必ず保険会社に確認しましょう。

従業員を雇用する場合の注意点

シンガポール人材省(MOM)は、2023年7月より、外国人労働者に対する医療保険の規定を強化しています。

SパスおよびWP(Work Permit)保持者を雇用する場合、雇用主は、最低S$15,000の入院補償と、S$45,000の手術補償を提供する医療保険への加入が義務付けられています。

オーナーご自身がEP(Employment Pass)を取得される場合、医療保険加入は法的義務ではありませんが、強くおすすめします。

次の章では、具体的にどの保険会社を選べば良いのか、主要保険会社の特徴と選び方のポイントをご紹介します。

シンガポール主要医療保険会社の特徴と選び方のポイント

シンガポールには、外資系やローカルの保険会社など、数多くの保険会社が存在します。
保険商品の数も膨大で、内容を理解するのはかなり難しいです。

ここでは、保険会社を選ぶ際のポイントと、主な保険会社をご紹介します。

保険会社を選ぶ際の5つのチェックポイント

保険会社を比較する際は、以下の点を確認しましょう。

1. 日本語サポート体制はあるか
問い合わせや請求手続きが日本語で対応してもらえるかは、特に移住直後は重要です。
英語での複雑なやり取りに不安がある方は、日本語サポートのある保険会社を選ぶと安心です。

2. 提携医療機関に日系クリニックが含まれているか
キャッシュレス診療を利用したい場合、日本語対応の日系クリニックが提携ネットワークに含まれているかを必ず確認しましょう。

3. キャッシュレス診療はどこまで対応しているか
通院のみか、入院も対応しているのか、どの病院でキャッシュレス利用が可能なのか、事前に確認が必要です。

4. 補償内容は十分か
通院・入院・手術・出産・歯科など、何がカバーされるのか。
また、年間補償限度額や、免責金額(自己負担額)がいくらなのかも重要です。

5. 数社から見積もりを取る
保険料は家族構成・年齢に応じて適切か 同じ補償内容でも、保険会社によって保険料は異なります。
最低でも3社から見積もりを取り、補償内容と保険料のバランスを比較することをおすすめします。

主な保険会社の紹介

ここからは、シンガポールにある主な保険会社をご紹介します。

Tokio Marine Insurance Singapore

日本の東京海上ホールディングスのグループ会社です。
シンガポールに進出してきたのは1945年。日系では最古参の保険会社ではないでしょうか。
個人の生命保険や医療保険も扱っており、日本語サポート体制が充実しています。

日系企業や日本人居住者に強く、日本人スタッフも在籍しているため、言葉の不安がある方には特におすすめです。

Singlife

2022年1月1日、アビバシンガポールとシングライフが合併して「シングライフ・ウィズ・アビバ」になりました。
その後、2023年1月には名称をシングライフと変更しました。

Avivaはロンドンに本部をおく総合保険会社で、シンガポールでは2004年に三井住友海上が損保事業を買収しています。
デジタル対応に力を入れており、オンラインでの手続きが簡単にできるのが特徴です。
保険料も比較的競争力のある設定になっています。

AIA

1919年、アメリカで設立されました。
香港、中国、タイ、シンガポールなどアジアとオセアニアの17か国、及び地域で、個人と企業向け生命保険、傷害疾病保険、年金プラン及び健康管理サービス等を提供している保険会社です。

元々AIGのアジア部門でしたが、2008年の金融危機で米国政府がAIGを救済した際に経営分離されました。

アジア全域で展開しているため、将来的にシンガポール以外のアジアの国への移動がある場合にも対応しやすい可能性があります。

AXA

1982年にフランスに創設された、総合保険会社です。
日本でもおなじみの保険会社ですね。

2022年、アクサ・シンガポールは、HSBC保険(アジアパシフィック)ホールディングスに買収され、
現在はHSBC保険の一部として運営されています。
グローバルなネットワークを持ち、幅広い保険商品を提供しています。

Great Eastern Life

1908年創設、シンガポールとマレーシアで最大規模の保険会社です。 2004年には、OCBC銀行のグループの子会社となりました。

シンガポールでの歴史が長く、ローカルでの信頼も厚い保険会社です。 現地に根付いた保険会社を選びたい方におすすめです。

保険選びで迷ったら

シンガポールには、外資系やローカルの保険会社など、数多くの保険会社が存在します。

保険商品の数は膨大で、内容を理解するのはかなり難しいです。

疑問があれば、保険会社にその都度確認し、ご自身の状況にあった保険を見つけてください。

また、保険の専門家やファイナンシャルアドバイザーに相談するのも一つの方法です。 複数の保険会社の商品を比較しながら、中立的なアドバイスを受けることができます。

大切なのは、「とりあえず加入する」のではなく、ご家族の状況、健康状態、予算に合った保険をしっかり選ぶことです。


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