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本記事では、2004年からシンガポールで法人設立支援を行い、
これまでに1250件以上の相談実績を持つ筆者が、
シンガポールで会社を設立する際のメリットとデメリットについて、
実務に即した視点から解説します。

特に「日本の税金の高さ」や「お子様の教育環境」に課題を感じ、
家族での移住を検討されている経営者の方に向けて、信頼性のある情報をお届けします。

「シンガポールでの会社設立って、なんとなく良さそう」で終わらせるのではなく、
シンガポール会社設立が、本当に価値のある選択かどうかを判断する材料として、ご活用いただければ幸いです。

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現地にて、経営者のためのシンガポール法人設立・節税移住をトータルでサポートします。
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シンガポールでの会社設立、まず押さえておきたい基本

メリット・デメリットのご説明の前に、まずは、シンガポールで会社を設立するにあたって、最初に知っておいていただきたい基本的なルールをまとめてみました。

シンガポール会社設立の基本要件

要件項目 説明
会社名
他社と似ていない独特な名前であること。末尾に「Pte. Ltd.」がつく。
取締役
シンガポール居住者が1名以上必要(ノミニーダイレクターで対応可能)。
株主
最低1名。外国人が100%出資することも可能。
最低資本金
S$1(約110円)から可能。ただし、実務的には数万ドルを目安とする。
会社秘書役
設立から6ヶ月以内に、現地在住者を任命する必要があり。
登記住所
シンガポール国内に実在する住所が必要。
事業内容
どんな事業を行うかを明示し、*SSICコードで登録。
設立書類
株主構成や経営ルールを定めた会社定款(Constitution)が必要。

*SSIC: Singapore Standard Industrial Classification (シンガポール標準産業分類)code
=シンガポール国内の企業が行う主な経済活動を分類するために使用される5桁の数字コード

会社設立の要件について、もっと詳しい情報を知りたい方は、シンガポール会計企業規制庁(ACRA)の「シンガポール国内での会社設立」(英文)ページをご覧ください。

シンガポールで会社を設立するデメリット

シンガポールに会社を作ると「節税になる」「ビジネス展開の機会が増える」「世界と繋がりやすい」」など、良い面ばかりを取り上げる事が多いのですが、実際には注意すべきポイントも少なくありません。

ここでは、私自身の体験も交えながら、シンガポール法人設立の「落とし穴」について、あらかじめお伝えしておきたいと思います。

デメリット その1

会社を設立したからと言って、節税になるわけではありません

シンガポールでの会社設立と節税についてのご相談を多くいただきます。

そうしたご相談から感じるのは、シンガポールに会社を設立するだけで、安易に節税できると考えている方が、非常に多いということです。

メリットの項で詳しくご説明しますが、シンガポールの法人税率は世界的に見ても低い水準にあります。このメリットを最大限に活かせば、大きな節税効果が期待できるのは事実です。

しかし、「シンガポールに法人を設立すること=節税になる」とは限りません。 まずは、節税を実現するための正しいスキームを構築することが不可欠です。

会社設立の意義を改めて確認しましょう。

せっかくシンガポールに会社を設立しても、その会社が事業の実態を伴わないペーパーカンパニーと見なされた場合、日本法人の一部として扱われ、日本で合算課税される可能性があります。
それでは、シンガポールに会社を設立した意味がありません。

また、会社の代表者がシンガポールに移住せず日本に留まる場合、その代表者はシンガポールにおいて外国人として役員報酬を受け取ることになり、シンガポールで源泉徴収税が課税される点にも注意が必要です。

デメリット その2

会社の維持費が意外にかかる

ペーパーカンパニー設立を検討中の方に対する注意点です。

シンガポール政府が法人税を低くしているのは、海外の優良企業を誘致し、
アジアや世界を拠点としたビジネスを展開してほしいから。

タックスヘイブンの島々とは異なり、シンガポール政府はペーパーカンパニーを歓迎しません。
世界的な租税回避対策の流れもあり、その対応は厳格化しています。

そのため、実体のない会社を設立しても、税制上のメリットはほぼ期待できません。
会社維持には、現地取締役や秘書役の設置、登記住所(バーチャルオフィスも可)。また、年度末会計の報告等、想定以上のコストがかかります。

低税率だけを目当てにした、実体のない会社設立は避けるべきです。

デメリット その3

法規が頻繁に変わる

シンガポールの法律やルールは、割と頻繁に変わることがあります。

特に会社に関わる法律や税金、従業員に関するルールが変わると、会社運営に影響を与える可能性があります。

そのため、常に新しい情報をチェックしたり、専門家の方に相談したりしながら、きちんと対応していくことが大切です。

デメリット その4

シンガポールのマーケットは小さい

実体のある事業展開を検討する際には、シンガポール国内市場の小ささという現実的な制約も視野に入れる必要があります。

シンガポールの国土面積は*約735.2km²。東京23区(約627.5km²)をやや上回る広さです。

商圏規模は、近年データが変動しているため一概には言えませんが、シンガポールの国内市場だけで大きなビジネス成長は見込みにくいのが現状です。

大きな事業展開を目指すなら、シンガポールに設立する会社を統括拠点とし、周辺国など他の市場との連携を視野に入れる必要があります。

*2024年6月に更新されたジェトロ(日本貿易振興機構)のデータによる

 

デメリット その5

やはり外国である

「一体何のこと?」と思われるかもしれません。
しかし、海外進出や移住を考える上で、これは非常に重要な認識です。

シンガポールで生活していると、ビジネスの場で「日本ならこうなのに」という言葉をよく耳にします。

すべてが日本と同じように進むと考えていると、「こんなはずではなかった」と失望することが多くなるでしょう。

特にシンガポールは、会社設立や移住のハードルが比較的低いため、日本式のやり方が通用すると錯覚しがちです。

実際、進出した日本企業のなかには、日本と同じ感覚で会社を運営しようとする傾向が見受けられます。
日本の習慣や価値観をそのまま持ち込もうとして、思ったように業績が伸びずに苦戦する例も少なくありません。

その結果、「やはりシンガポールはビジネスに向かない」と他責にし、早々に撤退してしまう企業も少なくありません。

海外で事業を行うということは、生活もビジネスも、日本とは根本的に違うということを理解しておく必要があります。
「日本と同じように進まなくて当然」というくらいの心構えで臨むことが、成功への第一歩となるでしょう。

デメリットまとめ

シンガポールでの会社設立には、維持費や生活費の高さ、商圏の小ささなど、複数の課題があります。

こうしたデメリットを踏まえた上で、 シンガポールで法人を設立すべきかどうかは、自社の事業内容や中長期的な経営戦略を踏まえて慎重に判断すべきです。

もし、これらのデメリットを十分にご理解いただいた上で、
それでもシンガポールでの法人設立をご希望であれば、
当社では、移住全般、就労許可取得、会社の設立から運営サポートまで、一貫してご支援させていただきます。

ご不明な点やご不安な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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シンガポールで会社を設立するメリット

シンガポールという国は、経営者にとって、そして一緒に生活するご家族にとっても、非常に優れた環境を提供してくれます。
ここでは、その魅力をもう少し詳しく見ていきましょう。

メリットその 1

圧倒的に有利な税制

多くの方がご存じのように、シンガポールでの会社設立の最大のメリットは、何と言っても低い税率にあります。

2025年4月現在の法人税率は17%です。

さらに、様々な税制優遇措置が適用されるため、実効税率に関しては10%以下になるケースが多いです。

たとえば、新規の法人に関しては、以下のような優遇が適用されます。

  • 最初のS$100,000までは75%の免税(3年間)
  • 次のS$100,000は50%免税

加えて、シンガポール居住者の株主に対する配当金は、原則として課税されません。このような有利な税制が、シンガポールをビジネス拠点として選ぶ理由の一つとなっています。

ただし、どれほど税率が低くても会社の売上が伴わなければ、この税制面での恩恵を十分に受けることはできません。まずは「売上ありき」という基本原則を、肝に銘じておきましょう。

メリットその 2

ビジネスに最適な政治・経済・生活基盤の安定性

シンガポールは、オーストラリアの経済平和研究所(IEP)が発表する「世界平和度指数(Global Peace Index)」で2024年にアジアトップの5位にランクインするなど、治安の良さでも知られています。

【2024年版】世界平和度指数ランキング(1位~5位)

順位 国名
1 アイスランド
2 アイルランド
3 オーストリア
4 ニュージーランド
5 シンガポール

シンガポールの「安全」は治安の良さだけではありません。

政治の安定性、透明性の高い行政運営、自然災害リスクの低さといった多方面での安定性が、ビジネスと生活の両面において理想的な環境を提供しています。

他の東南アジア諸国と比べて極めて政治が安定しており、利権絡みの問題が発生する可能性も非常に低く、クリーンな政府運営によってビジネス環境の確実性が高められています。

IMD世界競争力ランキング2024では第3位、世界経済フォーラムのグローバル競争力指数でも常に上位にランクインしており、長期的な事業計画を立てやすい環境が整っています。

加えて、資金調達や国際送金などの金融サービスも充実しており、経営者は本業のビジネス戦略に集中できる基盤があります。

さらに、自然災害リスクが極めて低く、地震・台風・津波の心配がほとんどないことから、世界中のIT企業や金融機関が災害リスクを最小化できる拠点としてデータセンターやリージョナルオフィスを設置しています。

これにより、日本のように災害に備えたコストのかかるインフラ設計が不要であり、ビジネス運営の安定性と継続性という観点でも大きな強みとなっています。

また、教育・医療環境の整備も進んでおり、家族での移住にも安心できる生活基盤が用意されています。


*IMD世界競争力ランキング2024:参考サイト: IMD World Competitiveness Center
IMDデジタル競争力ランキング2024:参考サイト:IMD World Competitiveness Ranking

メリットその 3

戦略的なハブ立地と世界トップクラスのインフラの整備

シンガポールは東南アジア諸国へのビジネス展開の”中継点”としてだけでなく、グローバルなビジネスハブとして最適な立地にあります。

世界トップクラスのチャンギ空港は、2023年にSKYTRAXで首位に返り咲くなど、その利便性は世界的に評価されています。

また、シンガポールからは、東南アジアだけでなく、オセアニア、インド、中東、アフリカへのアクセスも非常に良好です。

シンガポール vs 羽田からの主要ビジネス都市アクセス比較表
(2025年データ)

行き先 シンガポール発
(所要時間 / 便数)
羽田発
(所要時間 / 便数)
ムンバイ 約5時間40分/ 毎日5便 13時間以上(直行便無し)
ドバイ 約7時間 / 毎日5便 約11時間 / 毎日1便
ブリスベン 約7時間半 / 毎日5便 13時間以上(直行便無し)
クアラルンプール 約1時間10分 / 毎日40便以上 7時間20分 / 2便
ジャカルタ 約1時間45分 / 毎日30便以上 7時間50分 / 2便

上記の比較表から明らかなように、日本からは直行便がない、あるいは週数便に限られる主要ビジネス都市へも、シンガポール発であれば毎日複数のフライトが利用可能です。

また、アジアの主要都市への飛行時間や便数の圧倒的な違いも、ビジネススケジュールの柔軟性に大きく影響をあたえるでしょう。

2025年現在、チャンギ空港は100以上の航空会社が就航し、旅客機は、世界140都市以上と接続しています。

こうした戦略的な立地とフライトネットワークを活かし、伊藤忠商事・三井物産・丸紅などの日本の大手商社や、Google、Amazon、Microsoftといったグローバル企業の多くが、シンガポールをASEANやアジア太平洋全体の統括拠点として活用しています。

国内の交通インフラも充実しており、空港から市内中心部まで車で30分程度、公共交通機関も整備され、アジアの他の都市でよく見られる慢性的な交通渋滞の問題もほとんどありません。

メリットその 4

外国企業に開かれた友好的なビジネス環境

シンガポールは資源の乏しい小国であるため、海外からの投資と優秀な企業の誘致を国家戦略として推進しています。
そのため、外国企業や外国人経営者に対して非常に友好的な環境を提供しています。

多くのアジア諸国では外国資本に制限を設けていますが、シンガポールでは外国人が100%株式を保有する会社を設立することが可能です。

また、資本の移動も自由で、利益を日本など本国に送金することも比較的容易です。 ビジネスの立ち上げプロセスも明確で透明性が高く、会社設立の手続きはオンラインで効率的に完了できます。

さらに、政府による外国企業向けの支援プログラムや助成金も豊富に用意されています。

以下に、代表的な支援制度をご紹介します。

Enterprise Singapore(ESG)による助成金制度
Enterprise Development Grant(EDG)
市場進出、能力開発、イノベーション推進を支援する助成金で、外国企業でも申請可能です。
補助率は適格な費用の最大70%にのぼり、事業立ち上げ時の負担を大きく軽減できます。

経済開発庁(EDB)の税制インセンティブ
Regional Headquarters Award / International Headquarters Award
シンガポールに地域統括本部や主要拠点を設立する企業を対象に、法人税の優遇措置などのインセンティブが提供されます。グローバル展開を視野に入れた企業にとっては、大きな後押しとなる制度です。

■ テクノロジー系スタートアップ向け支援:SG-Innovate
SG-Innovateは、テクノロジー分野のスタートアップ支援を専門とする政府機関です。外国人創業者によるスタートアップも支援対象となっており、資金提供やネットワーキングの機会を得ることができます。

これらの支援制度は、企業の規模や事業内容、設立のフェーズに応じて柔軟に設計されており、外国企業にとっても非常に利用しやすいのが大きな魅力です。

こうした政府による手厚いサポート体制が整っていることは、シンガポールに法人を設立する大きなメリットの一つと言えるでしょう。

メリット・デメリットのまとめ

物事の捉え方は人それぞれ異なります。同じ事柄でも、メリットと感じる人もいれば、デメリットと感じる人もいるでしょう。

そのため、一般的な情報だけで判断するのではなく、ご自身の会社やビジネスの状況を十分に考慮することが重要です。

もちろん、シンガポールでの会社設立は、「税制メリット」「アジア・世界への事業展開」「安定した事業環境」といった多くのビジネス上のメリットをもたらしてくれる選択肢です。また、経営者ご自身やご家族の生活拠点としても検討される方が多いのも事実です。

ただし、メリットばかりが目立つ一方で、事業の実態や運営の継続性が求められる点は、あまり語られていないかもしれません。

大切なのは、「なぜシンガポールなのか?」「何のために作るのか?」という明確な目的意識を持つことです。

しっかりとした戦略とサポート体制があれば、シンガポール法人は、あなたのビジネスの未来を大きく広げてくれるパートナーになるはずです。

 


ここまでは、シンガポール会社設立のメリットとデメリットについて、主に制度や環境面から整理してきました。
ここからは、それらが実際のケースでどう活かされたのか?あるいは、うまくいかない要因になったのかを具体的な事例や、よくある質問を通じて見ていきます。

どんな人に向いている?シンガポール会社設立の成功パターン

では、シンガポールに法人を設立するのは、どのような方に向いているのでしょうか?私の経験上、以下のような方は、シンガポールでの会社設立と非常に相性が良い傾向にあります。

  • 日本国内の事業を継続しながら、海外展開を視野に入れている経営者
  • 節税を意識しているが、名ばかりではない“実態ある事業”を海外に持てる方
  • シンガポールに居住、または頻繁に訪問できる環境がある方

こういった方は、シンガポールで法人を設立することで、税務・国際展開・教育など複数のテーマを一挙に前向きに解決できる可能性があります。
一方で、「とりあえず作ってみよう」「誰かの名前を借りて形だけでも作っておけば安心」といったスタンスで進めると、いざ設立したは良いものの、機能させることができず、数年で閉鎖するようなケースも少なくありません。
「作る」こと自体は簡単ですが、「活かす」には明確な目的と戦略が必要です。

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